清少納言の枕草子　後編（秋、冬）

秋は夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、

あきはゆうぐれゆうひのさしてやまのはいとちこうなりたるに

烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、

からすのねどころへいくとてみつよつふたつみつなど

飛び急ぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの連ねたるが、

とびいそぐさへあはれなりまいてかりなどのつらねたるが

いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、

いとちいさくみゆるはいとをかしひいりはてて

風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。

かぜのおとむしのねなどはたいふべきにあらず

冬は、つとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。

ふゆはつとめてゆきのふりたるはいふべきにもあらず

霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、

しものいとしろきもまたさらでもいとさむきにひなどいそぎおこして

炭持てわたるも、いとつきづきし。昼になりて、

すみもてわたるもいとつきづきしひるになりて

ぬるくゆるびもていけば、火桶けの火も白き灰がちになりて、わろし。

ぬるくゆるびもていけばひおけのひもしろきはいがちになりてわろし

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