あの夏が飽和する。

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あの夏が飽和する。//カンザキイオリ https://youtu.be/mKaRxty1j7g https://youtu.be/2hz0lhAs0Kg(2020)

用語一覧(75件)

001

「昨日人を殺したんだ」

きのうひとをころしたんだ

君はそう言っていた。

002

君はそう言っていた。

きみはそういっていた

梅雨時ずぶ濡れのまんま、部屋の前で泣いていた。

003

梅雨時ずぶ濡れのまんま、部屋の前で泣いていた。

つゆどきずぶぬれのまんまへやのまえでないていた

夏が始まったばかりというのに、

004

夏が始まったばかりというのに、

なつがはじまったばかりというのに

君はひどく震えていた。

005

君はひどく震えていた。

きみはひどくふるえていた

そんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。

006

そんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。

そんなはなしではじまるあのなつのひのきおくだ

殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。

007

殺したのは隣の席の、いつも虐めてくるアイツ。

ころしたのはとなりのせきのいつもいじめてくるあいつ

もう嫌になって、肩を突き飛ばして、

008

もう嫌になって、肩を突き飛ばして、

もういやになってかたをつきとばして

打ち所が悪かったんだ。

009

打ち所が悪かったんだ。

うちどころがわるかったんだ

もうここには居られないと思うし、

010

もうここには居られないと思うし、

もうここにはいられないとおもうし

どっか遠いとこで死んでくるよ」

011

どっか遠いとこで死んでくるよ」

どっかとおいとこでしんでくるよ

そんな君に僕は言った。

012

そんな君に僕は言った。

そんなきみにぼくはいった

「それじゃ僕も連れてって」

013

「それじゃ僕も連れてって」

それじゃぼくもつれてって

財布を持って、ナイフを持って、

014

財布を持って、ナイフを持って、

さいふをもってないふをもって

携帯ゲームもカバンに詰めて、

015

携帯ゲームもカバンに詰めて、

けいたいげーむもかばんにつめて

いらないものは全部、壊していこう。

016

いらないものは全部、壊していこう。

いらないものはぜんぶこわしていこう

あの写真も、あの日記も、

017

あの写真も、あの日記も、

あのしゃしんもあのにっきも

今となっちゃもういらないさ。

018

今となっちゃもういらないさ。

いまとなっちゃもういらないさ

人殺しと、ダメ人間の君と僕の旅だ。

019

人殺しと、ダメ人間の君と僕の旅だ。

ひとごろしとだめにんげんのきみとぼくのたびだ

そして僕らは逃げ出した。

020

そして僕らは逃げ出した。

そしてぼくらはにげだした

この狭い狭いこの世界から。

021

この狭い狭いこの世界から。

このせまいせまいこのせかいから

家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。

022

家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。

かぞくもくらすのやつらもなにもかもぜんぶすててきみとふたりで

遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。

023

遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。

とおいとおいだれもいないばしょでふたりでしのうよ

もうこの世界に価値などないよ、

024

もうこの世界に価値などないよ、

もうこのせかいにかちなどないよ

人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか。

025

人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか。

ひとごろしなんてそこらじゅうわいてるじゃんか

君は何も悪くないよ。

026

君は何も悪くないよ。

きみはなにもわるくないよ

君は何も悪くないよ。

027

君は何も悪くないよ。

きみはなにもわるくないよ

結局僕ら誰にも愛されたことなど無かったんだ。

028

結局僕ら誰にも愛されたことなど無かったんだ。

けっきょくぼくらだれにもあいされたことなどなかったんだ

そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じあってきた。

029

そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じあってきた。

そんないやなきょうつうてんでぼくらはかんたんにしんじあってきた

君の手を握った時微かな震えも既に無くなっていて、

030

君の手を握った時微かな震えも既に無くなっていて、

きみのてをにぎったときかすかなふるえもすでになくなっていて

誰にも縛られないで二人、線路の上を歩いた。

031

誰にも縛られないで二人、線路の上を歩いた。

だれにもしばられないでふたりせんろのうえをあるいた

金を盗んで、二人で逃げて、

032

金を盗んで、二人で逃げて、

かねをぬすんでふたりでにげて

どこにも行ける気がしたんだ。

033

どこにも行ける気がしたんだ。

どこにもいけるきがしたんだ

今更怖いものは、僕らにはなかったんだ。

034

今更怖いものは、僕らにはなかったんだ。

いまさらこわいものはぼくらにはなかったんだ

額の汗も、落ちたメガネも

035

額の汗も、落ちたメガネも

ひたいのあせもおちためがねも

「今となっちゃどうでもいいさ。

036

「今となっちゃどうでもいいさ。

いまとなっちゃどうでもいいさ

あぶれ者の、小さな逃避行の旅だ」

037

あぶれ者の、小さな逃避行の旅だ」

あぶれもののちいさなとうひこうのたびだ

いつか夢見た優しくて、

038

いつか夢見た優しくて、

いつかゆめみたやさしくて

誰にも好かれる主人公なら、

039

誰にも好かれる主人公なら、

だれにもすかれるしゅじんこうなら

汚くなった僕たちも見捨てずに

040

汚くなった僕たちも見捨てずに

きたなくなったぼくたちもみすてずに

ちゃんと救ってくれるのかな?

041

ちゃんと救ってくれるのかな?

ちゃんとすくってくれるのかな

「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ?

042

「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ?

そんなゆめならすてたよだってげんじつをみろよ

シアワセの四文字なんてなかった

043

シアワセの四文字なんてなかった

しあわせのよんもじなんてなかった

今までの人生で思い知ったじゃないか。

044

今までの人生で思い知ったじゃないか。

いままでのじんせいでおもいしったじゃないか

自分は何も悪くねえと、誰もがきっと思ってる」

045

自分は何も悪くねえと、誰もがきっと思ってる」

じぶんはなにもわるくねえとだれもがきっとおもってる

宛ても無く彷徨う蝉の群れに、

046

宛ても無く彷徨う蝉の群れに、

あてもなくさまようせみのむれに

水も無くなり揺れ出す視界に、

047

水も無くなり揺れ出す視界に、

みずもなくなりゆれだすしかいに

迫り狂う鬼たちの怒号に、

048

迫り狂う鬼たちの怒号に、

せまりくるうおにたちのどごうに

バカみたいにはしゃぎあい

049

バカみたいにはしゃぎあい

ばかみたいにはしゃぎあい

ふと君はナイフをとった。

050

ふと君はナイフをとった。

ふときみはないふをとった

君が今までそばにいたからここまでこれたんだ。

051

君が今までそばにいたからここまでこれたんだ。

きみがいままでそばにいたらここまでこれたんだ

だからもういいよ。もういいよ。

052

だからもういいよ。もういいよ。

だからもういいよもういいよ

死ぬのは私一人でいいよ。」

053

死ぬのは私一人でいいよ。」

しぬのはわたしひとりでいいよ

そして君は首を切った。

054

そして君は首を切った。

そしてきみはくびをきった

まるで何かの映画のワンシーンだ。

055

まるで何かの映画のワンシーンだ。

まるでなにかのえいがのわんしーんだ

白昼夢を見ている気がした。

056

白昼夢を見ている気がした。

はくちゅうむをみているきがした

気づけば僕は捕まって。

057

気づけば僕は捕まって。

きづけばぼくはつかまって

君がどこにも見つからなくって。

058

君がどこにも見つからなくって。

きみがどこにもみつからなくって

君だけがどこにもいなくって。

059

君だけがどこにもいなくって。

きみだけがどこにもいなくって

そして時は過ぎて言った。

060

そして時は過ぎて言った。

そしてときはすぎていった

ただ暑い暑い日が過ぎてった。

061

ただ暑い暑い日が過ぎてった。

ただあついあついひがすぎてった

家族もクラスの奴らもいるのに

062

家族もクラスの奴らもいるのに

かぞくもくらすのやつらもいるのに

なぜか君だけはどこにもいない。

063

なぜか君だけはどこにもいない。

なぜかきみだけはどこにもいない

あの夏の日を思い出す。

064

あの夏の日を思い出す。

あのなつのひをおもいだす

僕は今も今でも歌ってる。

065

僕は今も今でも歌ってる。

ぼくはいまもいまでもうたってる

君をずっと探しているんだ。

066

君をずっと探しているんだ。

きみをずっとさがしているんだ

君に言いたいことがあるんだ。

067

君に言いたいことがあるんだ。

きみにいいたいことがあるんだ

9月の終わりにくしゃみして

068

9月の終わりにくしゃみして

くがつのおわりにくしゃみして

6月の匂いを繰り返す。

069

6月の匂いを繰り返す。

ろくがつのにおいはくりかえす

君の笑顔は、君の無邪気さは、

070

君の笑顔は、君の無邪気さは、

きみのえがおはきみのむじゃきさは

頭の中を飽和している。

071

頭の中を飽和している。

あたまのなかをほうわしている

誰も何も悪くないよ。

072

誰も何も悪くないよ。

だれもなにもわるくないよ

君は何も悪くはないから、

073

君は何も悪くはないから、

きみはなにもわるくはないから

もういいよ、投げ出してしまおう。

074

もういいよ、投げ出してしまおう。

もういいよなげだしてしまおう

そう言って欲しかったのだろう?なあ?

075

そう言って欲しかったのだろう?なあ?

そういってほしかったのだろうなあ

「昨日人を殺したんだ」

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