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読みが正確ではない場合がかなり多いと思うし統一されていない 参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%B3%E5%8F%A5#%E8%91%97%E5%90%8D%E3%81%AA%E4%BF%B3%E4%BA%BA
用語一覧(293件)
古池や蛙飛びこむ水の音
ふるいけやかわづとびこむみずのおと
松尾芭蕉
閑さや岩にしみ入る蝉の声
しずかさやいわにしみいるせみのこえ
松尾芭蕉
秋風や白木の弓に弦はらん
あきかぜやしらきのゆみにつるはらん
向井去来
湖の水まさりけり五月雨
みづうみのみづまさりけりさつきあめ
向井去来
をととひはあの山越つ花盛り
おとといはあのやまこえつはなざかり
向井去来
尾頭のこころもとなき海鼠哉
おかしらのこころもとなきなまこかな
向井去来
螢火や吹とばされて鳰の闇
ほたるびやふきとばされてにおのやみ
向井去来
鳶の羽も刷ぬはつしぐれ
とびのはもかいつくろいぬはつしぐれ
向井去来
応々といへど敲くや雪の門
おうおうといへどたたくやゆきのかど
向井去来
岩鼻やここにもひとり月の客
いわはなやここにもひとりつきのきゃく
向井去来
うまず女の雛かしづくぞ哀なる
うまずめのひなかしづくぞあはれなる
服部嵐雪
蜑の子にたうとがらせん道明寺
あまのこにたうとがらせんどうみょうじ
服部嵐雪
よろこぶを見よやはつねの玉箒
よろこぶをみよやはつねのたまははき
服部嵐雪
羽子板やたゞに目出度裏表
はごいたやただにめでたいうらおもて
服部嵐雪
ほつほつと食摘あらす夫婦かな
ほつほつとくいつみあらすふうふかな
服部嵐雪
霜朝の嵐やつゝむ生姜味噌
しもあさのあらしやつつむしょうがみそ
服部嵐雪
ふとん着て寝たる姿や東山
ふとんきてねたるすがたやひがしやま
服部嵐雪
星合や瞽女も願の糸とらん
ほしあいやごぜもねがいのいととらん
服部嵐雪
秋も早かやにすぢかふ天の川
あきもはやかやにすぢかうあまのがわ
森川許六
うの花に芦毛の馬の夜明哉
うのはなにあしげのうまのよあけかな
森川許六
茶の花の香や冬枯の興聖寺
ちゃのはなのかやふゆがれのこうしょうじ
森川許六
苗代の水にちりうく桜かな
なわしろのみずにちりうくさくらかな
森川許六
水筋を尋ねてみれば柳かな
みずすじのたずねてみればやなぎかな
森川許六
もちつきや下戸三代のゆずり臼
もちつきやげこさんだいのゆずりうす
森川許六
あさぎりに一の鳥居や波の音
あさぎりにいちのとりいやなみのおと
宝井其角
稲こくやひよこを握る藁の中
いねこくやひよこをにぎるわらのなか
宝井其角
傀儡の鼓うつなる花見かな
かいらいのつづみうつなるはなみかな
宝井其角
川上は柳か梅か百千鳥
かわかみはやなぎかうめかももちどり
宝井其角
小坊主や松にかくれて山ざくら
こぼうずやまつにかくれてやまざくら
宝井其角
ちり際は風もたのまずけしの花
ちりぎわはかぜもたのまずけしのはな
宝井其角
夏酔や暁ごとの柄杓水
なつようやあかつきごとのひしゃくみず
宝井其角
鬼灯のたぐひなす身や竜田姫
ほおずきのたぐいなすみやたつたひめ
宝井其角
水影やむささびわたる藤の棚
みずかげやむささびわたるふじのたな
宝井其角
夕立や田を三囲りの神ならば
ゆうだちやたをみめぐりのかみならば
宝井其角
京に居て京を見る日やひな祭
きょうにいてきょうをみるひやひなまつり
蓑笠庵梨一
目の前の島忘れたる汐干かな
めのまえのしまわすれたるしおひかな
蓑笠庵梨一
春の日や遊び遊びて竹のおく
はるのひやあそびあそびてたけのおく
蓑笠庵梨一
したたりや蝶の眠りのさめぬほど
したたりやちょうのねむりのさめぬほど
蓑笠庵梨一
かげろうに口あかぬ鳥なかりけり
かげろうにくちあかぬとりなかりけり
蓑笠庵梨一
百合の芽や世は鬼もなき山の中
ゆりのめやよはおにもなきやまのなか
蓑笠庵梨一
走り帆の風休ませよ青すだれ
はしりぼのかぜやすませよあおすだれ
蓑笠庵梨一
まつかぜや夢吹よせて昼寝塚
まつかぜやゆめふきよせてひるねづか
蓑笠庵梨一
牡蠣割りや乾く間もなき袖の汐
かきわりやかわくまもなきそでのしお
蓑笠庵梨一
よいものを見にけり空に郭公
よいものをみにけりそらにほととぎす
蓑笠庵梨一
春の海終日のたりのたり哉
はるのうみひねもすのたりのたりかな
与謝蕪村
ちりて後おもかげにたつぼたん哉
ちりてあとおもかげにたつぼかんかな
与謝蕪村
花いばら故郷の路に似たるかな
はないばらこきょうのみちににたるかな
与謝蕪村
二村に質屋一軒冬こだち
ふたむらにしちやいっけんふゆこだち
与謝蕪村
夏河を越すうれしさよ手に草履
なつかわをこすうれしさよてにぞうり
与謝蕪村
さくら散苗代水や星月夜
さくらちりなわしろみずやほしづきよ
与謝蕪村
月天心貧しき町を通りけり
つきてんしんまずしきまちをとおりけり
与謝蕪村
朝霧や村千軒の市の音
あさぎりやむらせんけんのいちのおと
与謝蕪村
笛の音に波もよりくる須磨の秋
ふえのねになみもよりくるすまのあき
与謝蕪村
うつつなきつまみ心の胡蝶かな
うつつなきつまみこころのこちょうかな
与謝蕪村
ところてん逆しまに銀河三千尺
ところてんぎゃくしまにぎんがさんぜんじゃく
与謝蕪村
おらが世やそこらの草も餅になる
おらがよやそこらのくさももちになる
小林一茶
雪とけて村いっぱいの子どもかな
ゆきとけてむらいっぱいのこどもかな
小林一茶
春風や牛に引かれて善光寺
はるかぜやうしにひかれてぜんこうじ
小林一茶
雀の子そこのけそこのけお馬が通る
すずめのこそこのけそこのけおうまがとおる
小林一茶
涼風の曲がりくねってきたりけり
すずかぜのまがりくねってきたりけり
小林一茶
やせ蛙負けるな一茶これにあり
やせがえるまけるないっさこれにあり
小林一茶
やれ打つな蝿が手をすり足をする
やれうつなはえがたをすりあしをする
小林一茶
秋風やむしりたがりし赤い花
あきかぜやむしりたがりしあかいはな
小林一茶
名月を取ってくれろと泣く子かな
めいげつをとってくれろとなくこかな
小林一茶
これがまあ終の栖か雪五尺
これがまあついのすみかかゆきごしゃく
小林一茶
元日や上々吉の浅黄空
がんじつやじょうじょうきちのあさぎぞら
小林一茶
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
かきくえばかねがなるなりほうりゅうじ
正岡子規
松山や秋より高き天主閣
まつやまやあきよりたかきてんしゅかく
正岡子規
春や昔十五万石の城下哉
はるやむかしじゅうごまんごくのじょうかかな
正岡子規
牡丹画いて絵の具は皿に残りけり
ぼたんかいてえのぐはさらにのころけり
正岡子規
山吹も菜の花も咲く小庭哉
やまぶきのなのはなもさくこにわかな
正岡子規
をとゝひのへちまの水も取らざりき
おとといのへちまのみずもとらざりき
正岡子規
風呂敷をほどけば柿のころげけり
ふろしきをほどけばかきのころげけり
正岡子規
柿くふも今年ばかりと思ひけり
かきくうもことしばかりとおもいけり
正岡子規
紫の蒲團に坐る春日かな
しばのふとんにふわるはるひかな
正岡子規
鶏頭の十四五本もありぬべし
けいとうのじゅうしごほんもありぬべし
正岡子規
赤とんぼ筑波に雲もなかりけり
あかとんぼつくばにくももなかりけり
正岡子規
蕎麦白き道すがらなり観音寺
そばしろきみちすがらなりかんのんじ
河東碧梧桐
赤い椿白い椿と落ちにけり
あかいつばきしろいつばきとおちにけり
河東碧梧桐
相撲乗せし便船のなど時化となり
すもうのせしびんせんのなどしけとなり
河東碧梧桐
雪チラチラ岩手颪にならで止む
ゆきちらちらおろしにならでやむ
河東碧梧桐
ミモーザを活けて一日留守にしたベットの白く
みもーざをいけていちにちるすにしたべっとのしろく
河東碧梧桐
曳かれる牛が辻でずっと見回した秋空だ
ひかれるうしがつじでずっとみまわしたあきぞらだ
河東碧梧桐
遠山に日の当たりたる枯野かな
とおやまにひのあたりたるかれのかな
高浜虚子
春風や闘志抱きて丘に立つ
はるかぜやとうしだきておかにたつ
高浜虚子
去年今年貫く棒の如きもの
こぞことしつらぬくぼうのごときもの
高浜虚子
道のべに阿波の遍路の墓あはれ
みちのべにあわのへんろのはかあわれ
高浜虚子
波音の由井ガ濱より初電車
なみおとのゆいがはまよりはつでんしゃ
高浜虚子
吾も亦紅なりとひそやかに
われもまたくれないなりとひそやかに
高浜虚子
子規逝くや 十七日の 月明に
しきいくやじゅうしちにちのげつめいに
高浜虚子
流れ行く大根の葉の早さかな
ながれゆくだいこんのはのはやさかな
高浜虚子
ひとへもの径の麦に刺されたり
ひとへもののけいのむぎにさされたり
臼田亞浪
コスモスへゆきかまつかへゆき憩ふ
こすもすへゆきかまつかえゆきいこう
臼田亞浪
今日も暮るる吹雪の底の大日輪
きょうもくるるふぶきのそこのだいにちりん
臼田亞浪
元日の石蕗にすさべり伊豆の海
がんじつのつわにすさべりいずのうみ
臼田亞浪
朝寝して犬に鳴かるる幾たびも
あさねしていぬになかるるいくたびも
臼田亞浪
隣から吾子呼んでをり沈丁花
となりからあこよんでおりじんちょうげ
臼田亞浪
ほくほくと馬がおり来る山桜
ほくほくとうまがおりくるやまざくら
臼田亞浪
雪の層波なし華厳落ちに落つ
ゆきのそうなみなしけごんおちにおつ
臼田亞浪
あるけばかつこういそげばかつこう
あるけばかっこういそげばかっこう
種田山頭火
うしろすがたのしぐれてゆくか
うしろすがたのしぐれてゆくか
種田山頭火
ゆうぜんとしてほろ酔へば雑草そよぐ
ゆうぜんとしてほろよえばざっそうそよぐ
種田山頭火
この旅、果もない旅のつくつくぼうし
このたび、はてもないたびのつくつくぼうし
種田山頭火
鈴をふりふりお四国の土になるべく
すずをふりふりおしこくのつちになるべく
種田山頭火
松はみな枝垂れて南無観是音
まつはみなえだたれてなむかんぜのん
種田山頭火
分け入つても分け入つても青い山
わけいってもわけいってもあおいやま
種田山頭火
山へ空へ摩訶般若波羅密多心経
やまへそらへまかはんにゃはらみたったしんぎょう
種田山頭火
おちついて死ねそうな草萌ゆる
おちついてしねそうなくさもゆる
種田山頭火
濁れる水の流れつつ澄む
にごれるみずのながれつつすむ
種田山頭火
墓のうらに廻る
はかのうらにまわる
尾崎放哉
肉がやせてくる太い骨である
にくがやせてくるふといほねである
尾崎放哉
いれものがない両手でうける
いれものがないりょうてでうける
尾崎放哉
考えごとをしている田螺が歩いている
かんがえごとをしているたにしがあるいている
尾崎放哉
こんなよい月を一人で見て寝る
こんなよいつきをひとりでみてねる
尾崎放哉
一人の道が暮れて来た
ひとりのみちがくれてきた
尾崎放哉
月夜の葦が折れとる
つきよのあしがおれとる
尾崎放哉
海風に筒抜けられて居るいつも一人
うみかぜにつつぬけられているいつもひとり
尾崎放哉
春の山のうしろから烟が出だした
はるのやまうしろからけむりがでだした
尾崎放哉
芋の露連山影を正しうす
いものつゆれんざんかげをただしうす
飯田蛇笏
死病得て爪うつくしき火桶かな
しびょうえてつめうつくしきひおけかな
飯田蛇笏
たましひのたとへば秋のほたるかな
たましいのたとえばあきのほたるかな
飯田蛇笏
なきがらや秋風かよふ鼻の穴
なきがらやあきかぜかようはなのあな
飯田蛇笏
をりとりてはらりとおもきすすきかな
おりとりてはらりとおもきすすきかな
飯田蛇笏
くろがねの秋の風鈴鳴りにけり
くろがねのあきのふうりんなりにけり
飯田蛇笏
誰彼もあらず一天自尊の秋
だれかれもあらずいってんじそんのあき
飯田蛇笏
頂上や殊に野菊の吹かれ居り
ちょうじょうやことにのぎくのふかれおり
原石鼎
淋しさに又銅鑼打つや鹿火屋守
さみしさにまたどらうつやかびやもり
原石鼎
花影婆娑と踏むべくありぬ岨の月
かえいばさとふむべくありぬそわのつき
原石鼎
秋風や模様のちがふ皿二つ
あきかぜやもようのちがうさらふたつ
原石鼎
雪に来て美事な鳥のだまり居る
ゆきにきてびじなとりのだまりいる
原石鼎
山一つ山二つ三つ夏空
やまひとつやまふたつみっつなつぞら
中塚一碧楼
春の昼小さい庭を横切る無頼の猫
はるのひるちいさいにわをよこぎるぶらいのねこ
中塚一碧楼
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり
こしかたやあしびさくののひのひかり
水原秋桜子
葛飾や桃の籬も水田べり
かつしかやもものまがきもみずたべり
水原秋桜子
梨咲くと葛飾の野はとの曇り
なしさくとかつしかのはとのくもり
水原秋桜子
啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々
きつつきやらくようをいそぐまきのきぎ
水原秋桜子
ふるさとの沼のにほひや蛇苺
ふるさとのぬまのにおいやへびいちご
水原秋桜子
冬菊のまとふはおのがひかりのみ
ふゆぎくのまとうはおのがひりのみ
水原秋桜子
瀧落ちて群青世界とどろけり
たきおちてぐんじょうせかいとどろけり
水原秋桜子
おのが声わすれて久し春の風邪
おのがこえわすれてひさしはるのかぜ
水原秋桜子
みちのくの町はいぶせき氷柱かな
みちのくのまちはいぶせきつららかな
山口青邨
祖母山も傾山も夕立かな
そぼさんもかたむきやまもゆうだちかな
山口青邨
たんぽぽや長江濁るとこしなへ
たんぽぽやちょうこうにごるとこしなへ
山口青邨
銀杏散るまつただ中に法科あり
ぎんなんちるまつただなかにほうかあり
山口青邨
外套の裏は緋なりき明治の雪
がいとうのうらはひなりきめいじのゆき
山口青邨
方丈の大庇より春の蝶
ほうじょうのおおひざしよりはるのちょう
高野素十
くもの糸ひとすぢよぎる百合の前
くものいとひとすじよぎるゆりのまえ
高野素十
ひつぱれる糸まつすぐや甲虫
ひっぱれるいとまっすぐやかぶとむし
高野素十
甘草の芽のとびとびのひとならび
あまくさのめのとびとびのひとならび
高野素十
翅わつててんたう虫の飛びいづる
はねわつててんとうむしのとびいづる
高野素十
づかづかと来て踊子にささやける
づかづかときておどりこにささやける
高野素十
空をゆく一とかたまりの花吹雪
そらをゆくひとかたまりのはなふぶき
高野素十
金剛の露ひとつぶや石の上
こんごうのつゆひとつぶやいしのうえ
川端茅舍
一枚の餅のごとくに雪残る
いちまいのもちのごとくにゆきのこる
川端茅舍
ぜんまいののの字ばかりの寂光土
ぜんまいのののじばかりのじゃっこうど
川端茅舍
約束の寒の土筆を煮て下さい
やくそくのかんのすぎなをにてください
川端茅舍
咳き込めば我火の玉のごとくなり
せきこめばわれひのたまのごとくなり
川端茅舍
朴散華即ちしれぬ行方かな
ほおさんげすなわちしれぬゆくえかな
川端茅舍
さみだれのあまだればかり浮御堂
さみだれのあまだればかりうきみどう
阿波野青畝
葛城の山懐に寝釈迦かな
かつしかのやまふところにねしゃかかな
阿波野青畝
なつかしの濁世の雨や涅槃像
なつかしのじょくせのあめやねはんぞう
阿波野青畝
露の虫大いなるものをまりにけり
つゆのむしおおいなるものをまりにけり
阿波野青畝
狐火やまこと顔にも一くさり
きつねびやまことかおにもひとくさり
阿波野青畝
水ゆれて鳳凰堂へ蛇の首
みずゆれてほうおうどうへへびのくび
阿波野青畝
牡丹百二百三百門一つ
ぼたんひゃくにひゃくさんびゃくもんひとつ
阿波野青畝
山又山山桜又山桜
やままたやまやまざくらまたやまざくら
阿波野青畝
夢の世に葱を作りて寂しさよ
ゆめのよにねぎをつくりてさびしさよ
永田耕衣
朝顔や百たび訪はば母死なむ
あさがおやひゃくたびとむらはばははしなん
永田耕衣
後ろにも髪脱け落つる山河かな
うしろにもかみぬけおつるさんかかな
永田耕衣
泥鰌浮いて鯰も居るというて沈む
どじょうういてなまずもいるというてしずむ
永田耕衣
死螢に照らしをかける螢かな
しぼたるにてらしをかけるほたるかな
永田耕衣
かたつむりつるめば肉の食い入るや
かたつむりつるめばにくのくいいるや
永田耕衣
少年や六十年後の春の如し
しょうねんやろくじゅうねんごのはるのごとし
永田耕衣
白梅や天没地没虚空没
しらうめやてんぼつちぼつこくうぼつ
永田耕衣
水枕ガバリと寒い海がある
みずまくらがばりとさむいうみがある
西東三鬼
算術の少年しのび泣けり夏
さんじゅつのしょうねんしのびなけりなつ
西東三鬼
白馬を少女瀆れて下りにけむ
はくばをしょうじょけがれておりにけん
西東三鬼
中年や遠くみのれる夜の桃
ちゅうねんやとおくみのれるよるのもも
西東三鬼
おそるべき君等の乳房夏来る
おそるべききみらのにゅうぼうなつきたる
西東三鬼
露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す
ろじんわしこふさけびてざくろうちおとす
西東三鬼
広島や卵食ふ時口ひらく
ひろしまやたまごくうときくちひらく
西東三鬼
頭悪き日やげんげ田に牛暴れ
あたまわるきひやげんげだにうしあばれ
西東三鬼
春暁や人こそ知らね木々の雨
しゅんぎょうやひとこそしらねきぎのあめ
日野草城
春の灯や女は持たぬのどぼとけ
はるのひやおんなはもたぬのどぼとけ
日野草城
ものの種にぎればいのちひしめける
もののたねにぎればいのちひしめける
日野草城
ところてん煙の如く沈み居り
ところてんけむりのごとくしずみいり
日野草城
高熱の鶴青空に漂へり
こうねつのつるあおぞらにただよえり
日野草城
夏布団ふわりとかかる骨の上
なつぶとんふわりとかかるほねのうえ
日野草城
見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く
みえぬめのほうのねがねのたまもふく
日野草城
学問のさびしさに堪へ炭をつぐ
がくもんのさびしさにこたえすみをかつぐ
山口誓子
かりかりと蟷螂蜂の皃を食む
かりかりとかまきりはちのかおをはむ
山口誓子
ほのかなる少女のひげの汗ばめる
ほのかなるしょうじょのひげのあせばめる
山口誓子
夏草に機缶車の車輪来て止まる
なつくさにきかんしゃのしゃりんきてとまる
山口誓子
ピストルがプールの硬き面にひびき
ぴすとるがぷーるのかたきもにひびき
山口誓子
夏の河赤き鉄鎖のはし浸る
なつのかわあかきてっさのはしひたる
山口誓子
海に出て木枯帰るところなし
うみにでてこがらしかえるところなし
山口誓子
炎天の遠き帆やわがこころの帆
えんてんのとおきほやわがこころのほ
山口誓子
蟾蜍長子家去る由もなし
ひきがえるちょうしいえさるよしもなし
中村草田男
降る雪や明治は遠くなりにけり
ふるゆきやめいじはとおくなりにけり
中村草田男
冬の水一枝の影も欺かず
ふゆのみずいっしのかげもあざむかず
中村草田男
玫瑰や今も沖には未来あり
はまなすやいまもおきにはみらいあり
中村草田男
萬緑の中や吾子の歯生え初むる
ばんりょくのなかやあこのははえそむる
中村草田男
勇気こそ地の塩なれや梅真白
ゆうきこそちのしおなれやうめましろ
中村草田男
葡萄食ふ一語一語の如くにて
ぶどうくういちごいちごのごとくにて
中村草田男
永き日のにはとり柵を越えにけり
ながきひのにわとりさくをこえにけり
芝不器男
麦車馬におくれて動き出づ
むぎぐるまうまにおくれてうごきいづ
芝不器男
向日葵の蘂を見るとき海消えし
ひまわりのしべをみるときうみきえし
芝不器男
あなたなる夜雨の葛のあなたかな
あなたなるよさめのくずのあなたかな
芝不器男
卒業の兄と来てゐる堤かな
そつぎょうのあにときているつつみかな
芝不器男
白藤や揺りやみしかばうすみどり
しらふじやゆりやみしかばうすみどり
芝不器男
一片のパセリ掃かるゝ暖炉かな
いっぺんのぱせりはかるるだんろかな
芝不器男
昃れば春水の心あともどり
ひかげればしゅんすいのこころあともどり
星野立子
ままごとの飯もおさいも土筆かな
ままごとのいいもおさいもつくしかな
星野立子
囀をこぼさじと抱く大樹かな
さえずりをこぼさじとだくたいじゅかな
星野立子
朴の葉の落ちをり朴の木はいづこ
ほおのはのおちおりほおのきはいづこ
星野立子
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ
ちちがつけしわがなたつこやつきをあおぐ
星野立子
しんしんと寒さがたのし歩みゆく
しんしんとさむさがたのしあゆみゆく
星野立子
美しき緑走れり夏料理
うつくしきみどりはしれりなつりょうり
星野立子
雛飾りつゝふと命惜しきかな
ひなかざりつつふといのちおしきかな
星野立子
寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃
かんらいやびりりびりりとまよのはり
加藤楸邨
鰯雲人に告ぐべきことならず
いわしぐもひとにつぐべきことならず
加藤楸邨
蟇誰かものいへ声かぎり
ひきがえるだれかものいえこえかぎり
加藤楸邨
隠岐やいま木の芽をかこむ怒涛かな
おきやいまきのめをかこむどとうかな
加藤楸邨
火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
ひのおくにぼたんくずるるさまをみつ
加藤楸邨
雉の眸のかうかうとして売られけり
きじのめのこうこうとしてうられたり
加藤楸邨
鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
あんこうのほねまでいててぶちきらる
加藤楸邨
木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ
このはふりやまずいそぐないそぐなよ
加藤楸邨
チチポポと鼓打たうよ花月夜
ちちぽぽとつづみうとうよはなづきよ
松本たかし
春月の病めるが如く黄なるかな
しゅんげつのやめるがごとくきなるかな
松本たかし
海中に都ありとぞ鯖火燃ゆ
かいちゅうにみやこありとぞさばびもゆ
松本たかし
夢に舞ふ能美しや冬籠
ゆめにまうのううつくしやふゆごもり
松本たかし
水仙や古鏡のごとく花をかゝぐ
すいせんやこきょうのごとくはなをかかぐ
松本たかし
雪だるま星のおしやべりぺちやくちやと
ゆきだるまほしのおしゃべりぺちゃくちゃと
松本たかし
美しく木の芽の如くつつましく
うつくしくきのめのごとくつつましく
京極杞陽
香水や時折キッとなる婦人
こうすいやときどききっとなるふじん
京極杞陽
都踊はヨーイヤサほゝゑまし
みやこおどりはよーいやさほほえまし
京極杞陽
春風の日本に源氏物語
しゅんぷうのにほんにげんじものがたり
京極杞陽
秋風の日本に平家物語
あきかぜのにほんにげんじものがたり
京極杞陽
詩の如くちらりと人の炉辺に泣く
しのごとくちらりとひとのろへんになく
京極杞陽
妻いつもわれに幼し吹雪く夜も
つまいつもわれにおさなしふぶくよるも
京極杞陽
わが知れる阿鼻叫喚や震災忌
われがしるあびきょうかんやしんさいき
京極杞陽
バスを待ち大路の春をうたがはず
ばすをまちおおじのはるをうたがわず
石田波郷
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ
ふきおこるあきかぜつるをあゆましむ
石田波郷
初蝶や吾が三十の袖袂
はつちょうやわがさんじゅうのそでたもと
石田波郷
霜柱俳句は切字響きけり
しもばしらはいくはきれじひびきけり
石田波郷
雁やのこるものみな美しき
がんやのこるものみなうつくしき
石田波郷
霜の墓抱起されしとき見たり
しものはかいだきおこされしときみたり
石田波郷
雪はしづかにゆたかにはやし屍室
ゆきはしづかにゆたかにはやしかばねしつ
石田波郷
泉への道遅れゆく安けさよ
いずみへのみちおくれゆくやすけさよ
石田波郷
今生は病む生なりき烏頭
こんじょうはやむなりきしょうなりとりかぶと
石田波郷
火を投げし如くに雲や朴の花
ひをなげしごとくにくもやほおのはな
野見山朱鳥
生涯は一度落花はしきりなり
しょうがいはいちどらっかはしきりなり
野見山朱鳥
秋風や書かねば言葉消えやすし
あきかぜやかかねばことばきえやすし
野見山朱鳥
曼朱沙華散るや赤きに耐えかねて
ひがんばなちるやあかきにたえかねて
野見山朱鳥
つひに吾れも枯野のとほき樹となるか
ついにわれもかれののとおききとなるか
野見山朱鳥
眠りては時を失ふ薄氷
ねむりてはときをうしなううすごおり
野見山朱鳥
雪国に子を生んでこの深まなざし
ゆきごににこをうんでこのふかまなざし
森澄雄
除夜の妻白鳥のごと湯浴みをり
じょやのつまはくちょうのごとゆあみをり
森澄雄
白をもて一つ年とる浮鷗
しろをもてひとつとしとるうみかもめ
森澄雄
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに
ぼうたんのひゃくのゆるるはゆのように
森澄雄
西国の畦曼珠沙華曼珠沙華
さいごくのあぜまんじゅじゃけまんじゅじゃけ
森澄雄
億年のなかの今生実南天
おくねんのなかのこんじょうみなんてん
森澄雄
木の実のごとき臍もちき死なしめき
きのみのごときへそもちきしなしめき
森澄雄
紺絣春月重く出でしかな
こんがすりしゅんげついでしかな
飯田龍太
春すでに高嶺未婚のつばくらめ
はるすでにたかねみこんのつばくらめ
飯田龍太
いきいきと三月生る雲の奥
いきいきとさんがつなるくものおく
飯田龍太
大寒の一戸もかくれなき故郷
だいかんのいっこもかくれなきこきょう
飯田龍太
父母の亡き裏口開いて枯木山
ちちははのなきうらぐちひらいてかれきやま
飯田龍太
一月の川一月の谷の中
いちがつのかわいちがつのたにのなか
飯田龍太
かたつむり甲斐も信濃も雨の中
かたつむりかいもしなのもあめのなか
飯田龍太
白梅のあと紅梅の深空あり
しらうめのあとこうばいのみそらあり
飯田龍太
貝こきと噛めば朧の安房の国
かいこきとかめばおぼろのあわのくに
飯田龍太
音楽漂う岸侵しゆく蛇の飢
おんがくただようきしおかしゆくへびのうえ
赤尾兜子
広場に裂けた木塩のまわりに塩軋み
ひろばにさけたきしおのまわりにしおきしみ
赤尾兜子
鉄階にいる蜘蛛智慧をかがやかす
てつかいにいるくもちえをかがやかす
赤尾兜子
ささくれだつ消しゴムの夜で死にゆく鳥
ささくれだつけしごむのよるでしにゆくとり
赤尾兜子
降る雪や踵の上の五十年
ふるゆきやかかとのうえのごじゅうねん
藤村多加夫
石榴割って医師と言うこのやさおとこ
ざくろわっていしというこのやさおとこ
藤村多加夫
年立ちぬ無明にて刻聴きをれば
としたちぬむみょうにてこくききおれば
藤村多加夫
病一つ殖やしいよいよ天高し
やまいひとつふやしいよいよてんたかし
藤村多加夫
水輪へ急ぐ雪や晩年の母見えて
すいりんへいそぐゆきやばんねんのははみえて
藤村多加夫
吾が声のあなた雪降る猫の胴
あがこえのあなたゆきふるねこのどう
藤村多加夫
秋風や人は大地に脚を置く
あきかぜやひとはだいちにあしをおく
藤村多加夫
一つ年越せり悲しき吐息せり
ひとつとしこせりかなしきといきせり
藤村多加夫
楸邨門たる栄光餅が焦げており
しゅうそんもんたるえいこうもちがこげており
藤村多加夫
巣燕や寂光院前階まろし
すつばめやじゃっこういんまえはしまろし
藤村多加夫
萬緑や死は一弾を以て足る
ばんりょくやしはいちだんをもってたる
上田五千石
ゆびさして寒星一つづつ生かす
ゆびさしてかんぼしひとつづついかす
上田五千石
もがり笛風の又三郎やあーい
もがりぶえかぜのまたさぶろうやあーい
上田五千石
秋の雲立志伝みな家を捨つ
あきのくもりっしでんみないえをすつ
上田五千石
渡り鳥みるみるわれの小さくなり
わたりどりみるみるわれのちいさくなり
上田五千石
あたたかき雪がふるふる兎の目
あたたかきゆきがふるふるうさぎのめ
上田五千石
たまねぎのたましひいろにむかれけり
たまねぎのたましいいろにむかれけり
上田五千石

