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小説が神すぎるっ! ていうか、カンザキイオリさんがそもそも神 マジで聞いてほしいっー!
用語一覧(81件)
『昨日人を殺したんだ』
きのうひとをころしたんだ
君はそう言っていた。
きみはそういっていた
梅雨時ずぶ濡れのまんま、
つゆどきずぶぬれのまんま
部屋の前で泣いていた。
へやのまえでないていた
夏が始まったばかりというのに、
なつがはじまったばかりというのに
君はひどく震えていた。
きみはひどくふるえていた
そんな話で始まる、
そんなはなしではじまる
あの夏の日の記憶だ。
あのなつのひのきおくだ
『殺したのは隣の席の、
ころしたのはとなりのせきの
いつも虐めてくるアイツ。
いつもいじめてくるアイツ
もう嫌になって、肩を突き飛ばして、
もういやになってかたをつきとばして
打ち所が悪かったんだ。
うちどころがわるかったんだ
もうここには居られないと思うし、
もうここにはいられないとおもうし
どっか遠いとこで死んでくるよ』
どっかとおいとこでしんでくるよ
そんな君に僕は言った。
そんなきみにぼくはいった
「それじゃ僕も連れてって」
それじゃぼくもつれてって
財布を持って、ナイフを持って、
さいふをもってナイフをもって
携帯ゲームもカバンに詰めて、
けいたいゲームもカバンにつめて
いらないものは全部壊していこう。
いらないものはぜんぶこわしていこう
あの写真も、あの日記も、
あのしゃしんもあのにっきも
今となっちゃもういらないさ。
いまとなっちゃもういらないさ
人殺しとダメ人間の君と僕の旅だ。
ひとごろしとダメにんげんのきみとぼくのたびだ
そして僕らは逃げ出した。
そしてぼくらはにげだした
この狭い狭いこの世界から。
このせまいせまいこのせかいから
家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と二人で。
かぞくもクラスのやつらもなにもかもぜんぶすててきみとふたりで
遠い遠い誰もいない場所で二人で死のうよ。
とおいとおいだれもいないばしょでふたりでしのうよ
もうこの世界に価値などないよ。
このせかいにかちなどないよ
人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか。
ひとごろしなんてそこらじゅうわいてるじゃんか
君は何も悪くないよ。
きみはなにもわるくないよ
君は何も悪くないよ。
きみはなにもわるくないよ
結局僕ら誰にも愛されたことなどなかったんだ。
けっきょくぼくらだれにもあいされたことなどなかったんだ
そんな嫌な共通点で僕らは簡単に信じあってきた。
そんないやなきょうつうてんでぼくらはかんたんにしんじあってきた
君の手を握った時、微かな震えも既に無くなっていて
きみのてをにぎったときかすかなふるえもすでになくなっていて
誰にも縛られないで二人で線路の上を歩いた。
だれにもしばられないでふたりでせんろのうえをあるいた
金を盗んで、二人で逃げて、
かねをぬすんでふたりでにげて
どこにも行ける気がしたんだ。
どこにでもいけるきがしたんだ
今更怖いものは僕らにはなかったんだ。
いまさらこわいものはぼくらにはなかったんだ
額の汗も、落ちたメガネも
ひたいのあせもおちたメガネも
「今となっちゃどうでもいいさ。
いまとなっちゃどうでもいいさ
あぶれ者の小さな逃避行の旅だ」
あぶれもののちいさなとうひこうのたびだ
いつか夢見た優しくて、
いつかゆめみたやさしくて
誰にも好かれる主人公なら、
だれにもすかれるしゅじんこうなら
汚くなった僕たちも見捨てずに
きたなくなったぼくたちもみすてずに
ちゃんと救ってくれるのかな?
ちゃんとすくってくれるのかな?
「そんな夢なら捨てたよ、だって現実を見ろよ。
そんなゆめならすてたよだってげんじつをみろよ
シアワセの四文字なんてなかった、
シアワセのよんもじなんてなかった
今までの人生で思い知ったじゃないか。
いままでのじんせいでおもいしったじゃないか
自分は何も悪くねえと誰もがきっと思ってる」
しぶんはなにもわるくねえとだれもがきっとおもってる
あてもなく彷徨う蝉の群れに、
あてもなくさまようせみのむれに
水も無くなり揺れ出す視界に、
みずもなくなりゆれだすしかいに
迫り狂う鬼たちの怒号に、
せまりくるうおにたにのどごうに
バカみたいにはしゃぎあい
バカみたいにはしゃぎあい
ふと君はナイフを取った。
ふときみはナイフをとった
『君が今まで傍にいたからここまでこれたんだ。
きみがいままでそばにいたからここまでこれたんだ
だからもういいよ。
だからもういいよ
もういいよ』
もういいよ
『死ぬのは私一人でいいよ』
しぬのはわたしひとりでいいよ
そして君は首を切った。
そしてきみはくびをきった
まるで何かの映画のワンシーンだ。
まるでなにかのえいがのワンシーンだ
白昼夢を見ている気がした。
はくちゅうむをみているきがした
気づけばどこにも見つからなくって。
きづけばぼくはつかまって
君だけがどこにもいなくって。
きみだけがどこにもみつからなくって
そして時は過ぎていった。
そしてときはすぎていった
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
ただあついあついひがすぎてった
家族もクラスの奴らもいるのに
かぞくもクラスのやつらもいるのに
なぜか君だけはどこにもいない。
なぜかきみだけはどこにもいない
あの夏の日を思い出す。
あのなつのひをおもいだす
僕は今も今でも歌ってる。
ぼくはいまもいまでもうたってる
君をずっと探しているんだ。
きみをずっとさがしているんだ
君には言いたいことがあるんだ。
きみにはいいたいことがあるんだ
九月の終わりにくしゃみして
くがつのおわりにくしゃみして
六月の匂いを繰り返す。
ろくがつのにおいをくりかえす
君の笑顔は
きみのえがおは
君の無邪気さは
きみのむじゃきさは
頭の中で飽和している。
あたまのなかでほうわしている
誰も何も悪くないよ。
だれもなにもわるくないよ
君は何も悪くないから
きみはなにもわるくないから
もういいよ。
もういいよ
投げ出してしまおう。
なげだしてしまおう
そう言って欲しかったのだろう?
そういってほしかったのだろう?
なあ?
なあ?